この記事は、米国のコンテンツ・ストラテジストの Karen McGrane氏が、モバイルデバイスのみを所持しているユーザーがおり、その結果としてデジタル・デバイドがなくなってきているという事実を米国政府の例をもとに説明しています。モバイルコンテンツの対応に迷われている方は読まれるといいでしょう。

# 364

アメリカ人の願い「モバイルコンテンツを最適化してほしい」

アメリカ人は、いつでも、どこでも、どんなデバイス上においても役に立つ政府を有するべきである。
President Barack Obama (オバマ大統領)

モバイルにおける変化のペースにはいつもイライラさせられる。企業は実際、モバイル機器のために最適化されたコンテンツやサービスを提供することに消極的であるが、一応モバイル戦略の必要性を「証明する」ために、より多くの研究を委託している。

当面の間、大きなスクリーンのために設計されたサイトを「pinch and zoom」(二本の指で画面を拡大・縮小する技術)しながら、最新のスマートフォンやタブレットで使用するしかないようだ。

さて、私達は意外なソースから、モバイルにおいて迅速な行動をとることに関するインスピレーションを発見できる:それは政府である。「オバマ大統領は、連邦行政機関の管理部門に、少なくとも2つの重要なサービスを、翌年中(2013年中)にモバイル機器上で利用可能にするよう命令した」ということである。

モバイルコンテンツを最適化するための構想は、アメリカ人にとってより役に立つ、21世紀プラットフォームの構築を目的としたさらに大きなDIGITAL GOVERNMENT(デジタルガバメント)戦略の一部である。

この戦略は、「政府のサービスを、「どのようにもっと効果的および効率的に提供するか」に関する包括的ビジョンをまとめたものであり、「政府機関は、どうしたらより効果的に技術やリソースをシェアすることができるか」から「プライバシーや政府の極秘データを維持する方法」に至るまで、すべてをカバーしている。

しかし、DIGITAL GOVERNMENT(デジタルガバメント)戦略全体を通して一貫しているのが、「政府は市民とコミュニケーションをとり、市民のためのサービスを提供する必要がある。そのサービスは、ウェブにアクセスするために市民が使うどんなデバイス上であっても利用できる必要がある」としているところである。

政府に当てはまるのであれば、それはまたあなたの企業にとっても当てはまると言えるだろう。顧客はあなたのコンテンツにアクセスするために、モバイル機器を使用している。ならばあなたは、顧客と同じ土俵で彼らとコミュニケーションをとるための戦略が必要となる。

個人のコンピュータ利用における革命

「ほとんどの人がポケットに、スマートデバイスを入れて持ち歩いている。それらは信じられないほどの処理能力を備えている。そしてスマートデバイスは政府の壁の内と外の両方で人々の原動力を生み出し、そこでは市民がより多くを求めている」
—Steven VanRoekel, U.S. chief information officer

家にブロードバンドインターネット接続がないと想像してみてほしい。仕事場でインターネットを使用することになるわけだが、あなたの雇い主は、あなたが仕事中にFacebookで小学校の同級生を探すのに何時間も無駄にしたのを知ってるかもしれない。それとも、Googleでばかげたことを検索していたこととか。

例えば、「ポップタルトを食べて死ぬ確率」だとか「サイのミルクは何の味がするか?」「ネッド・ フランダースのヌード」・・・詮索好きな同僚は、あなたの机を通り過ぎるたびにそれを見て知っているかもしれない。あなたが見ていたポルノ・・・・それはさておき。

確かに、私達はみなインターネット上で気恥ずかしい行動にふける(これは自宅で一人でやるのがベストだ)。

しかし、全く普通の情報を私達がオンラインで調べたいときがあることも忘れないでほしい。例えば、新しい仕事を探すだとか、病状について調べたり、銀行口座の詳細をチェックする、さらにはクリスマスプレゼントをネットで購入するなどといった、雇い主、同僚、またはパブリックコンピューター室で他人には知られたくない情報を調べるときである。

あなたが私と一緒なら、ほぼ20年間、家庭でのインターネット接続の便利さを堪能してきたことであろう。多くの人々にとって、インターネットへのアクセスはぜいたくであるという事実を見失うことは簡単である。

アメリカ人の35パーセントが自宅でのインターネットアクセスがない。アメリカ人の3分の1以上が個人の医療情報、ファイナンシャルプラニングのためのツール、またはびっくりする猫のGIFアニメーションにすら簡単にアクセスできないのである。

人種、収入や教育水準すべてが、人々が自宅でのブロードバンド接続を有しているかという点に影響する。およそ50パーセントの黒人系アメリカ人とヒスパニック系アメリカ人の両方が、自宅でのブロードバンド接続を有さない。

1年の稼ぎが3万ドル以下の、ほぼ60パーセントのアメリカ人が、自宅でのブロードバンド接続を有さない。では高校を出ていないアメリカ人は?なんと88パーセントが自宅でのブロードバンド接続を欠いている(注1)。情報格差[デジタルデバイド]は現実である。

しかし2012年初めには、88パーセントの成人アメリカ人が携帯電話を持つと報告されている(注2)。7月には、携帯電話を持つ55パーセントの成人アメリカ人が、スマートフォンを持ち、さらに過去3ヶ月に新しい電話を得た人々のうちの3分の2が、スマートフォンを選んだと報告されている(注3)。

より多くの人々がスマートフォンを取得すれば、現在インターネットにアクセスできない人々の多くが、手のひらの中に突然それを手に入れることになるであろう。携帯電話とブロードバンドインターネットアクセスの両方の代金を払う余裕がない人の多くの人々は、1つのデバイス-すなわち携帯電話を選ぶだろう。

ほとんどをモバイルですませるユーザー

「モバイルはアクセス革命の中で最終のとりでであった。モバイルは情報格差[デジタルデバイド]を消し去った。モバイルデバイスは多くの人々のためのインターネットである」
Susannah Fox, Pew Research Center

モバイル・コンピューティングがどのように人の行動を変化させたかについての話題では、よく発展途上国世界が取り上げられる。
何十億もの人々が、携帯電話からのみインターネットに接続するであろう。その発展はポジティブで、エキサイティングに見えるが、なかなか起こり得なさそうにも見えてしまう。つまり私達は、「モバイルのみ」のユーザーを、どこかアフリカかインドか中国の村民と同じくらい私達にとって異質なものであるとと思っている。

しかし私達は間違っている。
アメリカにおいて、少数民族のインターネットユーザーの数が増えているが、モバイルのみのユーザーである。2012年6月には、モバイルデバイスからインターネットにアクセスするアメリカ人の31パーセントが、常に、またはほとんどモバイルでインターネットに接続していると言っている。
彼らはほとんど、または一度もデスクトップ型やノートパソコンを使わない(注4)。さらには、自宅にブロードバンド接続がなさそうな人々は、インターネットにアクセスするのにモバイルデバイスを単独、またはほとんどをモバイルデバイスに頼る可能性が高い:

  • アフリカ系アメリカ人の51パーセント
  • ヒスパニック系アメリカ人の42パーセント
  • 1年の稼ぎが3万ドル以下のアメリカ人の43パーセント
  • 高等教育以下のアメリカ人の39パーセント

ブロードバンド接続とフルサイズのコンピュータにアクセスできる集団でさえ、携帯電話でインターネットを閲覧することを好む。あなたは、携帯電話を欲しがる年齢層18~29歳の人々とコミュニケーションをとりたいと思うか?スマートフォンから彼らを引き離すのは無理な話だ。実に彼らの45パーセントが、インターネットの閲覧はほとんど携帯電話で行うと言っているのだ。

インターナショナルデーターコーポレーション(International Data Corporation、IDC)の調べによると、2015年までに、もっと多くのアメリカ人が、デスクトップコンピューターよりもモバイル機器を通じてインターネットにアクセスするようになるということである。

これらの中にはデスクトップでウェブにアクセスできる人もいる。しかし背景事情、容易さ、または面倒臭さを理由に、彼らはまず最初にモバイルを選ぶであろう。デスクトップでウェブにアクセスできないそれ以外の人々は、あなたのコンテンツを閲覧する手段がないということだ。

ますます増えるこれらの人々にとって、もしあなたのコンテンツがモバイルのスクリーン上に存在しなければ、それは全く存在しないのと同じことなのだ。

コンテンツ戦略にとりかかるのに決して早すぎるということはない

あなたの企業は準備できているであろうか?あなたは、今すぐモバイルのためのコンテンツ戦略開発に取りかかれるか?

それとも、まだあなたは「モバイルなんて取るに足らない」、「お飾り」、「より大きなデスクトップのウェブサイトに比べたら米つぶみたいに小さなもの」というのがモバイルであると自分に言い聞かせているだろうか?

あなたは、モバイルコンテンツのフルセットを提供することが、「あるに越したがことない」ような、「本物の」ウェブサイトをリニューアルするのに投資した後にはじめて考えることであると思うか?

モバイルコンテンツを提供することは後で考えることではない。それは必須である。携帯電話はぜいたく品ではない。必需品である。
人々がインターネットにアクセスして得たいと思うちょっとした情報について考えてみてほしい。
彼らは、デスクトップコンピューターではないデバイス上でそれにアクセスする必要があるであろう。これらの人々が何かを調べたいと考えている?
彼らは、モバイル上でそれを探したいと考えるであろう。それを検索する必要がある? モバイル上でそれを検索したいと考えるであろう。深く、完全にそれを読みたいと考えている?モバイル上でそれを読もうとするだろう。それに記入し、それを文書化し、それをシステムに入れる必要がある?モバイル上でそれをする必要があるであろう。

主流のデスクトップユーザーの外側にいる人々に達する必要がある企業にとって、これはなおさらである。政府機関は、コンテンツをすべての市民に提供するという責任を持っている。そしてそれは、モバイル上でもコンテンツを提供提供することを意味する。

例えば、行政機関が最も危険な状態にあると考えられる住民に対して、公衆衛生のメッセージを提供しようと努めたとしても、そのコンテンツがモバイル上で入手可能でない限り、それらメッセージは彼らに届かないであろう。
あなたは機会均等の雇用者であるか?アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系アメリカ人のユーザーが見つけられる所にコンテンツを提供できない限り、あなたは機会均等の雇用者であるとは言えない。あなたは、これらのグループにおけるすべての人々が、もう一歩だけ踏み込んで、あなたのサイトをデスクトップで見つけてくれるだろうと仮定することはできない。
あなたは、彼らがいる所-要するにモバイル-にそれを持って来る必要があるのだ。

どうやるのか

米国のDIGITAL GOVERNMENT(デジタルガバメント)戦略は、モバイルコンテンツを最適化するための顧客中心のアプローチをまとめたものである。
あなたの企業は、この政府が取り入れたハンドブックを手本にする必要はないかもしれないが、情報やサービスをモバイル上へ取り込むの政府の計画は、あなたが自分のコンテンツをモバイル上に取り込むのに役立つかもしれない。
以下は、あなたが自分の企業のために考慮するべきとされる米国政府のアプローチを2、3ハイライトしたものである:

構造化コンテンツを管理する

今日、アメリカの連邦機関の開発下にあるドメインのうち57パーセントが、CMSを用いて構築されていない(注5)。その結果、コンテンツの管理や更新が煩わしくて難しいプロセスとなる。コンテンツは静的サイト(最悪の場合印刷物のように)のように固定されてしまい、コンテンツを新しいプラットフォームに移動することを難しくする、もしくは不可能にする。

政府は連邦機関に、オープンソースCMSツールを検討するよう推奨している。そして適切なメタデータを配置することで、非構造的なページを構造化データへと変え、コンテンツをモデル化することを推奨している。

プレゼンテーション独立型コンテンツの作成

最終的な情報の提供やプレゼンテーションに焦点を当てる代わりに(ウェブページ、モバイルアプリケーションまたはパンフレットなどすべてのパブリッシュにおいて)、現在連邦機関は「情報中心の」アプローチを推奨されている。

これはコンテンツをプレゼンテーションから切り離すことを意味し、完全な分類や信頼できるメタデータを伴ったより完璧なコンテンツを記述する代わりに、同じコンテンツを多様なコンテンツに再利用することが可能となることを意味する。

コンテンツをサービスとして扱う

政府のコンテンツやデータをAPIを通じて利用可能にすることは、そのデータの価値を増加させる。政府が、GPSと気象データを一般に利用できるようにしたとき、数十億ドル産業に火がつけられた。
それらのコンテンツやデータを構造化し、それをAPI経由でアクセス可能なサービスとして扱うことによって、政府はコンテンツをより多くの人々に、またより多くの機器で利用可能にすることができる(セキュリティと機密情報に関するコントロールを維持しながら)。

あなたもできる。 今すぐ始めよう

米国政府は、政府の目的が、パンフレット、ハンドブック、またはバインダーをパブリッシュすることではないとすでに認識している。政府の目的は、Webページをパブリッシュすることでもない。アプリをパブリッシュすることでさえない。政府の目的は、アメリカ市民に逐一情報を提供することである。

政府の挑戦と責任は、アメリカ市民に対してすべてのフォーマットで情報入手を可能にすることである。どんなデバイスを使うかは私達が決めるのだ。政府が私たちに無理強いできるものでもない。

同じことがあなたの企業にもあてはまる。あなたはすでに、モバイル機器からしかあなたのコンテンツにアクセスしない顧客がおり、その数は増加するだけだ。あなたのウェブコンテンツがモバイルに対して完全に最適化されていなければ、あなたはこれからますます増える一部のアメリカ人にとっては見えない存在となる。

遅すぎることはないが、今始める時である。計画を練り、あなたのコンテンツをモバイル機器上でパブリッシュするために、まずは戦略を確立しなければならない。

  1. 1. From the Pew Internet Project’s Digital Differences report
  2. 2. From Pew’s mobile research
  3. 3. According to a 2012 report from Nielsen
  4. 4. From Pew’s 2012 Cell Internet Use report
  5. 5. According to the State of the Federal Web report (PDF) from the .gov Reform Task Force